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3万年前の航海再現って? 与那国島から西表島 [技術]

沖縄には非常に古い人類遺跡がある。南方から海を渡って人類がやってきたという仮説に基づいて、その航海を再現しようというプロジェクトが行われた。しかし、どうもその趣旨がよくわからない。

最古の人類痕跡が3万年前くらいにさかのぼるから、その頃、海を渡って来たという想定だが、沖縄列島は、おそらく二万年前くらいまで、大陸と陸続きだったから、航海の必要なんかない。しかし、こういった古地理については、それほど正確さがあるものではないので、あるいは、全く海を渡る必要がなかったと断言するわけにも行かないかも知れない。

このプロジェクトでは、葦船を使うということだが、その理由は、旧石器時代には、鋭い刃物がなかったので、木材の加工が出来ず、与那国島には葦があるからだそうだ。方向は逆で、台湾や南方の島で葦が自生していたかを考えなければならないはずだ。葦船のプロモーターが最初から関与している事からみても、葦船ありきのプロジェクトだとわかる。理由は後付けに過ぎない。

実際に海を渡ったとすれば、おそらくそれは、丸木舟か筏だろう。木を焼くことで、刃物はなくとも丸木舟を作ることは出来る。葦船を組み上げるにはかなりの造船知識と編み込み技術がいるから、そう簡単ではなかったはずだ。。目的地がどれだけ遠いかわからない航海では、大量の荷物を積む必要があるから、おそらく筏だ。ハイエルダールのラー二世号などは、こういったことを踏まえたものだ。

わずか2日間の航海であることが最初から分かっているのでは、たとえコンパスを使わないとしても、なんの検証にもならない。実際には、北に流されたことを知って曳航してもらっているから、GPSまで動員してしまっている。

あまり、プロジェクトの意味には、感心しないのだが、成り行きには興味があった。中国は琉球との交通に、台湾から与那国、先島諸島といった島伝い航路ではなく、昔から尖閣を通る直行ルートを取っている。日本では誰も存在を知らなかった尖閣が中国でよく知られていたのは、そのためだ。この理由は海流にあるのではないかと思っていた。台湾の周りは海流の流れが速い。

案の定、葦船の航海は失敗した。主催者側は成功と言い張っているが、途中、海流に流されて随伴船に曳航してもらったのだから明らかに失敗だ。推進抵抗が大きく、漕いでも時速2kmくらいしか出ないのだから、海流に逆らえるはずがない。この海域の潮流は10kmになることもざらだ。葦船は湖沼で使われるもので、外洋航海には無理があると言うことだ。

沖縄にはサバニという軽快な小舟がある。多少、潮流があっても、これなら漕ぎぬける。ただし、波浪には弱く、やはり外洋向きではない。外洋を航行するということは、生易しいことではなく、造船術、航海術といったものの積み上げが必要で、その基礎となる天文学や数学がいる。外洋航海は文明そのものなのである。自然の中でのロマンチックな夢と簡単に結びつけてしまうのは、考えが足りない。

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