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教育勅語が教えるいびつな世界 [政治]

教育勅語は戦前の教育の根本をなすものであり、1948年6月9日に、国会において廃止確認決議された。その理由は「根本的理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残す」ということである、

教育勅語には14もの徳目を並べているが、「以テ...天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」と結んで、これらが天皇家の隆盛のためのものであるとしているので、間違いなく主権在君であり、主権在民の日本国憲法と相容れないことは明白だ。だからこれに対しては唯一人の反対もなく全員一致で可決された。国会決議としては重い意味をもつものだ。

しかし、復古主義者の中には、「徳目自体は悪いものではない」「教育勅語のどこが悪い」などと言いだす輩が出始めている。幼稚園の子供たちに暗唱させるといった極端なことまで行われ、それを首相夫人が激励したと言う。徳目を並べれば、何であれ、ちょっと見たところ悪いものには見えない。それなら山口組綱領を暗唱させても良いことになる。実際、山口組綱領は教育勅語とかぶるところが多い。

しかしながら、山口組綱領なども、よく読んでみるとやはり暴力団らしく、いびつな世界を描き出していることがわかる。徳目の目的は「侠道精神に則る国家社会の興隆」であり、これが「以て...皇運ヲ扶翼スヘシ」に対応している。民主主義社会から見れば、どちらも、いびつな世界を目指していることが明らかだろう。

教育勅語の徳目も良く見ればかなりゆがんだものである。何が強調され、何が抜け落ちているか少しその中身を見て見よう。おのずと徳目のもととなる考え方が浮かび上がってくる。

父母ニ孝ニ 兄弟ニ友ニ 夫婦相和シ
教育勅語の徳目の最初は家族愛といったものだが、これをわざわざ三つに分けているのは、それぞれ異なる性格のものだと言う考え方をしているからだ。親に対しては「孝行」という一方的な家族愛を要求する。封建制の名残である。親が子供に注ぐべき愛情には全く触れられない。兄弟は相互的なものだが、夫婦になるとまた一方的になる。これを定めた明治天皇は10人以上の愛人を抱えていたことを鑑みれば、愛人と不倫している夫とさえ「相和す」ことを要求するのであるから、たちが悪い。

朋友相信シ 恭儉己レヲ持シ 博愛衆ニ及ホシ
次の3つは社会に対する所作である。ここで強調されているのは恭儉すなわち自己抑制だ。自らの独創性を発揮したり、議論して新しいものを生み出すといった姿勢は否定される。社会を前進させるためには、各自がしっかりと自分の意見を表明して行くことが大切なのだが、ここにはそれが見られない。「もの言えば唇寒し」の世の中を受け入れろということだ。言動を慎まなければ友人を信頼すること、人情厚く振る舞う事につながらないと言うのは、自由に発言すれば村八分だぞという脅しでもある。あまりにも古い考え方だ。

學ヲ修メ 業ヲ習ヒ 以テ智能ヲ啓發シ 德噐ヲ成就シ
この4項目は自己啓発なのだが、それが何のためであるかが問題だ。自他ともに豊かな人生を目指すといった考え方はなく、「以て...皇運ヲ扶翼スヘシ」に直結している。学ぶ喜び、働く喜びといったものを見出すことなく、ひたすら難行苦行を天皇家への忠誠のために要求するのである。学ぶことが権利であるという教育の基本的な考えが欠落してしまっている。

進テ公益ヲ廣メ 世務ヲ開キ 常ニ國憲ヲ重シ 國法ニ遵ヒ 一旦緩急アレハ 義勇公ニ奉シ
国家との関係は、従順であれとの一言につきる。国家が決めた公益に進んで協力することを強調する。法律を守ることは教育以前のものであるのに、わざわざここで述べているのは、国家に都合の良い人間になれとの指示を強調するものにすぎない。そして、志願して兵隊となり、人を殺すこともいとわない勇敢さも徳目としているのである。

教育勅語の徳目の考え方も問題なのだが、徳目の取り上げ方にもひどい偏りがある。「ウソをつくな」「迫害にめげず正義をつらぬけ」「命を大切にせよ」「希望を失うな」といった人として大切なことが全部抜け落ちている。教育勅語はウソをつきまくる詐欺師でも信奉できる内容のものだということが森友事件で示された。総じて教育勅語の道徳観はあまりにも古いと言うしかない。「之ヲ中外ニ施シテ悖ラス」などと「皇運ヲ扶翼スヘシ」を外国にまで押し付けるのは確かに国会決議の言うとおり、国際信義に背くものであり、世界征服の野望を表現したものとも受け取られる。

教育勅語が指し示すものは、まさに民主社会から隔絶した「いびつな世界」に他ならない。
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