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丸山ワクチンとオプジーボ [医療]

 丸山ワクチンは、ガンの特効薬と言われたり、全く効かない薬だと言われたり、極端に評価が分かれたまま半世紀を経過した薬だ。なぜ、このようなことになるかと言うことになるのだが、これは丸山ワクチンが特異な開発経過で生まれたことと、免疫強化型の薬剤の宿命とも言える事情が重なった結果だ。

丸山ワクチンは、ガン研究者ではなく、皮膚科の臨床教授である丸山氏によって開発された。結核患者にガンが少ないと言うことを感じた丸山氏が、結核菌からの抽出物を無毒化して薬剤とした。なぜこれがガンに効くのかは不明なのだが、ともかく投与された患者からは高い評価を受けた。丸山氏はこのワクチンをガンの特効薬として熱心に広めた。このやり方は学術的な手法ではなく、効果を統計的にはっきりと示す手順も踏んでいなかった。

使い方としては、濃い薬剤と薄い薬剤を一日おきに交互に皮下注射するという変わったものだが、なぜそのような使い方をするのかと言う根拠は示されない。ただ丸山氏がこう決めたに過ぎない。作用機序についても、免疫を強化するのだと主張するが、その詳細を解明する論文は出されていない。こういった科学的裏付けを軽視する手法が学会からは疎まれることになった。

結局、保険適用の薬剤としては認可されなかったのだが、偽薬として使用が禁止されたわけではない。「有償治験」つまり、研究段階の薬剤であるが、その治験に参加する患者から料金を保険外で取っても良いという状態が半世紀も続いているのだ。統計を取って科学的に効果を実証することは出来ないのだが、患者側からの評価は高いといった状況の反映だと言える。これまでに、40万人もの人が丸山ワクチンを使った。

なぜ丸山ワクチンの評価が高いかというと、「効いた」と考えている患者さんが多いからだ。丸山をクチンは、生物学製剤で、中身は結核菌の生成物であり、いろんな成分を含んだ生薬のようなものだ。どの成分がどのようなメカニズムでガンに効くのかは一切分かってていないのだが、雑多な成分がガン以外のところで作用することがある。

丸山ワクチンを使った患者さんが、「体が楽になった」とか「かゆみがなくなった」「気持ちが晴れる」といった実感を持つことが多いようだ。こういう効果をもたらす薬はいっぱいあるのだが、抗がん剤でこんな効果をもつものはない。抗がん剤は強烈な副作用で患者に苦痛を与えるのがむしろ普通だ。だから、統計的に実証される効果以上に体感として効果ありと感じる人が多い。副作用がなく、保険不適用にもかかわらず値段が安いというのも、人気の源だろう。

なぜ効果を実証したと認められないかについて、陰謀説や利権説が出て、話がややこしいことになっているのだが、「免疫強化」という薬剤は一般に効果の証明が難しい。ウコンとかアガリスクといった民間療法も、多くは「免疫強化」を謳っている。免疫の実態がよくわかっていないので簡単に評価ができないのだ。

免疫強化型の薬剤は、免疫力を高めてそれでガンに対処しようというもので、細胞を攻撃するものではないから副作用も少ない。しかし、その作用は間接的でしかない。もともと人間には免疫機構があり、これがガンの発生を防いでいるのだが、ガンになったということは、すでに免疫は一度突破されてしまったということだ。いまさら免疫を強化しても発生の防止には手遅れであり、すぐに劇的な効果を期待できるわけがない。

免疫強化の効果は、むしろガンの成長を遅らせると言った形で現れるはずだ。ガンの成長が緩やかになると、がん細胞にも寿命があるから、やがては、成長が止まったり、縮小したりすることも起こる。しかし、腫瘍の増大が緩やかになったとしても、増大している事には変わらないので、ただちに効果を証明することにはならない。効果が現れるためには時間がかかるとなると、当然その間に体調の変化や、病状の進展があり、効果の判別が難しくなる。ゆるやかな効果だから他の薬剤とも併用される。これでまた効果の確認が困難になる。

通常の抗がん剤は、直接がん細胞に作用して、がん細胞を叩く。正常細胞をも叩いてしまうので、副作用が激しい。しかし、一時的であるにせよ腫瘍が縮小するといった結果が目に見えるので効果の確認は容易だ。一時的な縮小が、実際の延命につながっているかと言うと、そうでもない。叩かれたガンは一時的に縮小しても、耐性が生じて、また大きくなり出すのが常だ。

本当の効果判定は、一時的なものではなく、がんという病気がが克服できるかどうかなのだが、この点ではどの薬剤もはっきりした効果を示していないのが現実だ。直接がん細胞を叩く薬が「効く」と評価されているのは、一時的な効果が見えるだけの事にに他ならない。目に見える一時的効果がない免疫強化型の薬剤は、あやふやな効果しか示せない。

だから、免疫強化型の薬剤が効果判定されることは少ない。クレスチン、ピシバニールなどといった薬が、なんとか効果が認められるという統計データを出して認可されたことがあったが、結局は後日効能が否定されることになった。こういった薬が、効能を否定されるまでの間に、莫大な売り上げを記録したことも、丸山ワクチン潰しの陰謀論を生み出すもとになっている。

しかし、免疫強化型の薬剤にも転機が訪れた。最近、開発されたニボルマブ(オプジーボ)も免疫強化型の新薬だが、はっきりとした効果を示すことが出来て、保健薬として認可もされた。値段が極めて高いことが問題になっている。丸山ワクチンとどこが違うかというと。分子標的薬で作用機序がはっきりしていると言うことだ。

T細胞が ガン細胞のアトポーシスを誘導するという免疫をになっているが、この働きを止めるスイッチ(PD-1)が表面に出てしまっている。がん細胞の方が、PD-L1などを用意してT細胞のPD1と結合することでT細胞を不活性にしてしまうので、この免疫機構はうまく働かない。ニボルマブは、このPD-1に蓋をしてT細胞を再び活性化する。作用機序がわかっているから、適応症も見つけ易い。悪性黒色腫に限って治験することで奏効率22%が得られた。22%は、あまり高い数字と感じられないかも知れないが、丸山ワクチンなどは、この基準で判定すれば1%以下になるだろう。

ニボルマブの登場で、免疫強化型のガン治療薬は、新たな展開が期待されるようになった。免疫機構の解明が進めばこうした新薬が次々と生み出され、一時的な効果だけで可否を問われていたがん治療薬の基準も変わっていくだろう。民間療法が強調する「免疫力」といった得体のしれないものに振り回されることも少なくなっていくだろう。
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